高橋直樹著『湖賊の風』感想

 中世の近江、堅田を舞台にした高橋直樹著『湖賊の風』(講談社、2001年)の感想です。

 湖賊とは、湖(みずうみ)の海賊という意味。物語の舞台は室町時代、足利義政将軍の治世。応仁の乱が勃発する直前から始まります。

 主人公の魚鱗(ウロクズ)は堅田の漁師の子ですが、より自由な境涯を求めて堅田を出奔、もぐりの舟運業を始めます。彼の破天荒な行動は、堅田の湖賊衆、堅田奉行たる山門(延暦寺)護正院、本願寺門徒衆、粟津の供御人らを巻き込んで、がんじがらめに支配された中世社会を変革する大きなうねりとなって行きます。これは、その過程での魚鱗を中心とする堅田湖賊衆と山門との戦いを中心に描いた物語。

 中盤以降、堅田の直接支配を目論む山門の堅者隆拓(りっしゃりゅうたく)と船道衆(湖賊)、全人衆(商工業)、漁師らが団結して戦うところから、話は面白くなってきます。物語に厚みを加えるサイドストーリーとして、蓮如率いる本願寺に関する描写が度々あって、これがなかなか興味深い。特に堅田の本福寺は現在でも残っている名刹だけに、地元の者にとっては親しみがわくところです。

 史実をそのまま再現するというよりも、エンターテイメント性を強調しているので、最後までわくわくしながら読みました。歴史物というよりは、中世を舞台にした時代小説と言えるかも知れません。