映画「フラガール」感想

 「フラガール」(李相日監督)を見て来ました。常磐ハワイアンセンターの設立時の苦労話を、フラダンスを踊る娘たちの視点で描いた物語。
 感想を語るにあたっては少しネタバレしています。これから見に行く人の妨げにはならないと思いますが、念のため。

 まずはあらすじを。
 昭和40年、廃坑の危機にある常磐炭鉱を救うため、一大ハワイアンリゾートの建設が計画される。その目玉となるのはフラダンスショー。ハワイアンセンターの吉本部長(岸部一徳)はフラダンスを踊る娘を募集するが、集まったのはたった4人。炭鉱で働くのを辞めたい一心の少女・早苗(徳永えり)。親友の早苗のつきあいでいやいやながら参加した紀美子(蒼井優)。会社の事務担当で子持ちの初子(池津祥子)。そして、南海キャンデーズのしずちゃん(笑)。フラダンスなんて踊るのはおろか、見るのも初めてな素人ばかりだった。
 吉本部長は、東京から専属の先生(松雪泰子)を招くが、これがまたやる気ゼロのやさぐれ女。他にも炭鉱をやめてハワイアンをやることへの非難、フラダンスに対する周囲の無理解等々、いろんな難問を抱えながら、生徒たちはそれでも一生懸命にダンスの練習を始める。自分たちの未来を、自分たちの手でつかむことを夢見て……。

 タイトルからはなんとなく「スウイングガールズ」のフラダンス版かな?という印象を受けますが、見てみると全然違いました。炭鉱に生きる大人たちとフラダンスに夢をかける少女たちを対比させながら描いた感動作です。花形だった石炭産業が凋落を始める、その重苦しい時代に懸命に生きようとした人々の物語。それがバックボーンになっているからこそ、彼女らのダンスが輝くのでしょう。

 中盤、早苗が常磐の町に別れを告げるところが、一番の感動シーン。早苗役の徳永えりの真っ直ぐで飾らない演技が胸を打ちます。あとはもう泣けるシーンの連続。それがただのお涙頂戴になっていないのは、物事と人の心の動きを丁寧に追って行っているから。例えば、椰子の木とストーブの話なんて一歩間違うとあざといネタになっちゃうんですが、その前に伏線を二つほど張っているから、無理なく感動できるんですよね。

 役者の演技も非常にいい。特に豊川悦司と富司純子。トヨエツは普段の妖しさはどこへやら、非常に難しい役どころを見事にこなしていましたし、富司純子は最後にはもうそこに立っているだけで涙ぐんでしまうほどの存在感。この二人を始めとした役者の演技力があってこそ、泣ける映画になっているのだと思いました。
 他にも、岸部一徳は相変わらず味がありますし、松雪泰子と蒼井優のダンスも見事の一言でした。唯一演技面で不安だったしずちゃんも特に悪くはなかったです。

 最後にジェイク・シマブクロの音楽も非常に印象的でした。炭鉱の町とハワイアンという一見ミスマッチなのに、ミスマッチに思えないところが良かった。特にテーマ曲は出色のできだったと思います。

 最後のエンドロールが終わるまで誰も席を立たず、回りが明るくなったら、それまで流していた涙をそっと拭きながら静かに劇場を後にして余韻にひたる、そんないい映画でした。


※総合評価。5段階で5点満点。今年の邦画の中では一、二を争う傑作でしょう。特に思いっきり泣いてみたいという方は是非!




(10月13日追記)
 「フラガール」2回目を見に行きました。その感想はこちら。(注:全面ネタバレしています)